懐中時計のガラス風防

 

 

時計の風防とは?

風防とは、時計の文字盤を守るカバーの役割を果たしているもので、時計のガラス部分と言うとご理解いただけるのではないでしょうか。
一般的な形と言えば丸型で、四角形や長方形も比較的定番になっています。

実はこの風防には、おおまかにわけて3つの種類があり、ガラス・プラスチック・サファイアガラスという素材が使われています。
特にアンティーク時計と呼ばれる年代の時計には、「ガラスもしくはプラスチック」の風防が使われています。
現在販売されている多くの時計は、サファイアガラスという傷や衝撃にも強い素材が使われていますが、歴史としては新しく、1970年頃のクォーツの普及で平らな風防が使用されるようになり、時計の形が変わることがきっかけで広まっていきます。

年代の新しい時計の風防

 

 

プラスチック風防が使用されるようになったのはいつ頃から?

プラスチックと聞くと、使われ始めたのは最近のように思われますが、実はプラスチック風防もその歴史は古く、時計に使われるようになるのは1920年代頃から。
ただ腕時計に一般的にみられるようになるのは、1940年・50年代頃。
時計の形自体が多様化し、風防の形も同じく多様化してからになります。

多様な風防の形
【 カタログに見る多様な風防の形 】

アンティーク時計でも、比較的古いものにプラスチックが使われている理由は、プラスチックにも同じく古い歴史があるためです。
懐中時計にも同様に、プラスチック風防が見られることがありますが、年代の古いものについてはプラスチック風防が普及していない年代になりますので、後年になってプラスチックに交換されたものと考えて良いでしょう。

 

 

プラスチックとガラスどちらが良いの?

一般的に好まれるのは、質感などからガラスが圧倒的に人気です。
プラスチックという響きや質感から、少し安っぽいと感じられるのも一つの理由でしょう。
修理などでお預かりをして、交換をさせていただく場合、ほとんどのお客様がガラスをお選びになります。

でも実は、ガラス・プラスチックともに、それぞれ真逆の長所と短所があります。
それぞれの長所と短所を見ていただくと、一概にガラスのほうが良いとは言えないとお分かりいただけると思います。

 

ガラス風防の長所と短所

厚みがあり触ったときや見た目という質感が非常に良く、プラスチックのように細かな傷がつきにくいので、綺麗な状態を長く保てるという長所があります。
短所としては、傷が付きにくいものではありますが、ガラス素材であるため、尖ったものが当たると傷になることもあり、角が当たるとその衝撃で欠けてしまうこともあります。
ガラス風防は小さな傷でも磨いて簡単に取り除くことはできませんので、基本的にはそのまま残ります。

ガラス風防の傷
【 ガラス風防の表面に残る傷 】

最も大きな点としては、落下などの衝撃を受けた時に割れてしまう点で、ガラスのコップが割れるように、風防も同様に砕けて割れる性質があり、打ちどころや衝撃の度合いによっては、風防全体が割れてしまうことがあります。
ガラスであるがゆえに、割れた破片は小さな破片にまで砕けることがあり、一つ一つがとても鋭利。
その鋭利な破片が文字盤を傷つけてしまうことが多く、時計の顔ともいえる文字盤に傷が入ってしまうという致命傷になってしまうことが多々あります。

砕けたガラス風防
【 砕けたガラス風防 】
強い衝撃や当たり所によっては、この写真のように破片になって砕けます。
この写真を撮影する際も、飛び散ってガラスが肌に刺さるほどの鋭利さでした。

 

落とす・割れるような衝撃を与えなければ良いだけではあるのですが、落下はある程度防げても、不意に腕が固いものに当たってしまうことはないことではありません。
外観や質感という点では非常に優れていますが、万が一割れてしまった場合という時に、大きなデメリットがあります。
特に貴重・希少な時計の場合は、万が一でもできるだけ損傷を避けたいという理由から、コレクターの方などはプラスチック風防を選ばれる場合があります。

ガラス風防のエッジ
【 ガラス風防のエッジ(ふちの部分) 】
古いガラス風防には、特有のエッジがあって、同じサイズの風防でも、エッジ部分が広さや厚みにちがいがあります。
時計によっては、このエッジ部分と時計のデザインが良い雰囲気を生み出します。
マニア・コレクターの方には、このエッジ部分の雰囲気を好まれる方が多くいらっしゃいます。

 

また現代では、特殊な形のガラス風防を製作されているところはあまりなく、製作するとなると費用自体も高額で、作るところがなく作れないということもあります。
腕時計や懐中時計などサイズを問わず、丸い形であれば、比較的入手はしやすいものですが、腕時計の特殊形状のものになると、現存する昔に作られたデッドストック品を入手するという形になるか、プラスチック風防を選ぶことになります。

 
 

プラスチック風防の長所と短所

短所としては、通常の使用の範囲であっても、すぐに傷がついてしまうこと。
表面上の擦れのようなわずかな擦り傷も起こりやすく、尖ったものが当たると、かなり深い傷になることもよくあります。
ガラス風防が常に透明な色合いであるのに比べて、プラスチックは傷が付きやすいことから、比較的すぐにかすんだ色合いになってしまうことがあります。

ただその反面、素材として柔らかいため、研磨することによって、細かな傷を取ったり、ある程度の深さの傷でも磨きとることができます。
手慣れた方であれば、やすりやコンパウンド等で、ご自身である程度のケアをしていただけるというメリットがあります。

プラスチック風防の擦り傷
【 プラスチック風防の擦り傷 】
ごくわずかに擦っただけでも、見た目にすぐにわかる擦り傷になることがあります。

 

硬く割れやすいガラスと比べると、プラスチックは柔らかい素材ではあるものの非常に「粘り」があり、ガラスなら割れてしまうような衝撃を受けても割れない、もしくはヒビが入る程度で済むことが多々あります。
割れてしまっても、ガラスなどに比べると、破片という形で「砕ける」ということがなく、ひび割れの延長としていくつかに割れてしまう程度。
また割れてしまったとしても、破片もあまり鋭利ではなく、文字盤を傷つけるというリスクという点では、プラスチックに大きな軍配が上がります。

割れたプラスチック風防
【 割れたプラスチック風防 】
かなり強めに叩いても、風防にひびが入る程度。
ハンマーで叩いた瞬間に、弾力で押し返されるような感覚があります。
完全に砕けた状態にするためには、何度も叩かなければ割れません。
プラスチックとは反対に、ガラスであれば同等の力で一度叩くと粉々に砕けます。

 

素材自体が加工しやすいことから、形やサイズなどに関わらず、新しいものを作ってもらいやすい・ガラスに比べて安価で済むというメリットもあります。
プラスチック風防とガラス風防を比べると、同じ形であればプラスチック風防のほうが少し高くなっていて、取り付けると、少し出っ張った形になるのもプラスチック風防の特徴です。

ガラス風防とプラスチック風防の高さの違い

【 上がガラス風防、下がプラスチック風防 】
ガラス風防が底面近くからすぐに丸い形を作り始めるのと違って、プラスチック風防は少し足のような部分があり、一段上がってそこから丸くなっています。
すべてがこのような形になっているわけではありませんが、プラスチック風防はこのような形になっているものが多くなっています。
そのため時計に取り付けると、プラスチック風防は一段分飛び出たような姿になります。

 

 

ガラス風防とプラスチック風防の見分け方

古いものもしくは使用されていたものであれば、よく眺めていただくと、見た目で見分けがつくかもしれません。
細かな擦り傷などが表面にある場合は、プラスチックだと考えていただくと良いでしょう。
ガラスにも小さな傷は付きますが、プラスチックによくある擦り傷のような線・継続した傷ではなく、それぞれが単体の小さな傷になるのが特徴です。

少しわかりづらいのですが、併せて爪先でトントンと軽く叩いていただくと、ガラスのほうは重たい音、プラスチックのほうはやや軽いポコポコとした音のように感じられます。
ただよほど慣れた方でない限りは、どちらもあまり見分けは付きにくいものです。

風防だけが単体であれば、机など少し固い面の場所に軽くコンコンと落としてみて、その音を聞くと見分けがつきます。
プラスチックはポコポコ・コンコンといったあまり響かない音、ガラスは同じコンコンという音でもキンキンというような少し甲高い音がします。

指で風防を強めになでる
触って判別していただくという方法が比較的確かですので、お持ちの時計でプラスチック風防とガラス風防のものがあれば、一度触ってみて試してください。
指を風防の表面に軽く押し付け、そのまま指で風防を押さえるような感じでスライドさせてください。
ほとんど抵抗なくスッと指が動くほうがガラス、指がズリズリと抵抗を受けながら動く場合はプラスチックです。
この方法をお試しいただくときは、絶対に力を入れすぎないこと。
またハンターケース(蓋付きの懐中時計)の風防は非常に薄くできていますので、絶対に試さないでください。

 

 

風防を交換するならどちらがお勧め?

もし風防を交換する機会があれば、どちらを選べばよいのか?
それは本当に時計をお使いいただく方の好みによります。

絶対に傷をつけたくないような貴重な時計の場合、特にコレクターやマニアのような方は、プラスチックを選ばれる傾向が高くなっています。
その理由は、風防自体が傷などで劣化しやすいものの、割れた時に時計本体にダメージを与えるリスクが少ないことから。
また風防に付いた軽度な傷であれば、磨いてある程度は綺麗にしてあげることができるため。
ですがこれはあくまで、そういった特別な時計や、使用するリスクを極力減らしたい方ならばという選び方です。

一般的には、細かな傷が付きにくいことや質感が良いことから、ガラス風防をお選びいただくのが良いと思います。
ガラスの場合、プラスチックに付きやすい軽い擦り傷などは付きにくく、それに反してプラスチックは、使用していくと擦り傷が気になりやすいものです。
また腕時計でも懐中時計でもそうですが、風防自体の見た目やそれ自体の重みもあることから、時計自体の質感が確実に上がります。
ただ、よく時計を落としてしまわれる方や、過去に風防が割れるようなことがあった場合は、プラスチック風防をお考えいただくのも良いでしょう。

特殊な形の風防であれば、もし今、同じ形のガラス風防が入手でき交換できるのであれば、ガラス風防をお選びいただくのも一つの手です。
特殊なガラス風防は、現在は製造されておらず、昔に作られたデッドストック品に依存するところが多く、特殊な形状のものほど、将来的にはガラスを選ぶことができなくなることがあるためです。

 

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