懐中時計と双眼鏡

 

 

秘められた壮大な歴史と家族のドラマ。

時計も作られてから100年も経っていれば、何人かのオーナーを経て受け継がれているものもあります。
時計によっては何人もの技術者の手によって修理されるものもありますし、時計によっては再び動き出して商品になるまで半年や数年かかるものもあります。
そんなに手間で大変なのに未だに100年前の時計にこだわって、どうして当店が販売や修理を続けているのか?
それは、私たちが時計を大好きだからということ、そしてそこに共有したい価値と感動があるからです。

1900年頃の古い写真

すべての時計には歴史やドラマがあり、すべての時計は一つひとつに個性があり、1つとしてまったく同じものはありません。
1つの時計がお客様の手に渡るまで、そこには50年古くは100年を越えた壮大な歴史があるはず。
時計に刻まれた刻印、愛する人の名前、贈られた日付。当時としても非常に珍しい写真が内側に残されているものもあります。
現代のように時計は使い捨てのような安いものではありません。非常に高級なもので宝石のように大切にされていたものだったのです。

 

時計によっては、あるご家庭の御祖父様が御祖母様へプレゼントされ、それが子供・孫へと伝わり、それを当店が受け取りお客様のもとへ。
そしてお客様のお子様へと伝わっていくものかもしれません。
作られてから100年が過ぎた時計であれば、現在まで残されていることが1つの奇跡。

祖父と孫

産業革命・第一次さらに第二次の大きな世界戦争の時代を乗り越え、デジタル時計が主流になった時代、携帯電話で時間を見るようになった時代をも乗り越えてきたのです。
その長い年月や時代の移り変わりの中、持ち主が変わる中で、この時計は捨てられてしまってもおかしくなかったもの、金の値段が高騰する中、金として溶かされてしまってもおかしくなかったものなのです。
それが現代まで残されていたのは、伝え続けた持ち主の想いであり、その時計が持っていた大きな幸運という星のおかげなのかもしれません。
1つの時計が当店に届きそしてお客様の元へ届けられる。
修理できないと言われて当店に届いた時計が、息を吹き返してお客様の元へ届けられる。
なんとも壮大なドラマです。

 

 

同じものは1つとしてありません

懐中時計

アンティーク時計は、ある意味で1つひとつが違い同じものはこの世に1つとして存在しません。
同じメーカーで同じ年代に作られた、モデル番号が同じ機械でも実は同じではありません。
現代ではメーカーが違っても機械は同じというものが増えていますが、昔の時計は時計の蓋を開けた内側に一つひとつに個性があります。
それはなぜか?
もちろん技術的に現代のように大量生産できなかったという背景もありますが、昔は同じ機械であっても、最後の仕上げに職人がひと手間を掛けていたからです。
同じように作られた部品でもまったく同じではない。99%同じであってもその1%が誤差を生みます。そのため最後のわずかな調整は職人の手に委ねられていました。
そのため、同じ時計であってもごくわずかに違うもの。

 

また長い歳月を経た時計たちは、その長い歳月の中で使われることによって、機械に曲りや摩耗を生じているものです。
それは言ってみればビンテージジーンズの穴や傷のようなもの。曲りや摩耗、またケースに付けられた傷までもがその時計の個性なのです。
どんな時計が届いても、その時計ごとに状態も違えば作られ方も違います。
当店は毎日同じ仕事をさせていただいているようで、実は毎日違う仕事になっているのです。
このような数々の時計を扱わせていただく時、まれに同じデザイン・同じ機械が手に入ったとして見た目は同じであっても、「最後のひと手間の意味」そして「過ごしてきた歳月の重み」を感じるのです。

 

時計

素晴らしい魅力はあるものの、どうしても直らないような時計に出会う。それでもその時計に秘められた深い魅力に憑かれたように、なんとか直せないものかと方法を探る。
同じ部品が無いだろうか、替わりになるものはないだろうか、作ることはできないだろうか、違う方法はないだろうか、考え出すと夜中に良い考えが閃いて仕事にかかることもあります。
止まっていた時間が再び動き出すとき、職人としての感動を覚えずにはいられません。
そしてその時計が再び新しい持ち主のもとへ旅立つ時、あの時諦めずにいて良かった、この時計を再び商品として送り出してあげることができてよかったと思えるのです。

 
機械と工具
アンティーク時計が作られたのは人の手によって。そしてそれを直すのも人の手。
一つひとつを丁寧に分解して、組み立ててはまた直し組み立てる。
人の手によって作られ、人の手によって直され、人の手によって使われ、人の手によって伝えられていくもの。
そんな人間らしい温かみにがあるのがアンティーク時計です。

商品についてこのような語りをさせていただくことは、商品のページではありませんし、時計修理のお店・販売店であってもこのようなことが語られることはありません。
アンティーク時計って楽しいの?と尋ねられたら、私たちはこんな想いで時計と接していること、それぞれの時計にこんなことがあるんだということを最後までお読みいただいたお客様に伝えたいと思います。

 

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