巻き芯と機械の関係

 

 

時計の機械そのもの、もしくは巻き芯にグラグラとした感触があるのはなぜ?

リューズを引く、回すといった操作の際に、ケースの中で時計の機械が、操作に合わせて少し動いているように感じられる。
またリューズを持ってリューズを回す・引くといった動作の際に、巻き芯が少しぐらぐらと動くような、ぐらつきが感じられる。
作られた年代の古いアンティーク時計をお持ちでしたら、本当に古いものから、新しいものであれば1960年代くらいの時計にまで、このようなことを感じられたことがおありではないでしょうか。

壊れているのかな?故障ではないでしょうか?
いえいえ、実はご説明できる原因があるのです。

よくご相談をいただくことがありますが、上記の年代に当てはまる時計であれば、それが正常な形であることがよくあります。
全てがすべて、正常な形というわけではありませんが、その時代の時計の作りに起因するものであることが多く、その時代の時計の作りを知っていただくと、どうしてそのようなことが起こるのか、そのように感じられるのかが、よりお分かりいただけるはずです。

こうした感覚を受けられることの理由は、大きく分けて2つあります。
1つは、時計の機械を収めるケースに起因するもの。
そしてもう1つは、巻き芯とリューズの位置・接続部分に起因するものです。

 

 

時計の機械を収めるケースに起因する場合

非常に古い初期の腕時計から、1950年代頃までの長い期間、解消しきれなかった構造上の問題であることが原因です。
このような感覚を特に受けられることが多いのが、腕時計のケースが、2ピース(上蓋と本体)で構成されているもの。

この2ピースという構造のケースは、表蓋と本体部分の2つのパーツで構成されていて、ケースの本体部分に、機械と同じ形の穴が開いていて、そこに機械を収め、表蓋を被せて閉めるという作りになっています。

腕時計の2ピースケース

機械を収める場所

このような作りの場合、ケースの機械を収める穴の部分と、機械の形がしっかりと噛み合っていなければ、穴と機械との間にわずかな隙間ができるため、リューズを操作する際に、リューズは機械と繋がっていますので、その動作に合わせて、機械が少し動いてしまうことがあるというわけです。
通常はかなりしっかりとサイズは合わせてあるものですが、機械を出してメンテナンスすることが前提であった機械式時計ですので、外れないような作りにはなっていません。

また同様に、ケースを横から見ると、巻き芯が通るケースの穴の部分も、巻き芯という部品が回ることが前提になっている部品であるだけに、少し余裕をもってサイズが取られています。
そのため巻き芯の回りには少し隙間があり、リューズを持った際に、機械とケースに隙間があると特にですが、少しグラグラとした感じを受けられることがあります。

巻き芯の通る穴

時計のケースが表蓋・本体・裏蓋と3ピースになっている場合や、少し年代が進んで、本体と裏蓋のような2ピースになっている場合は、機械をケースにしっかりとネジ止めすることができる、もしくはパッキン等での押さえがしっかりとできる作りになっているため、ぐらつくような感覚は出にくくなっています。

時計そのものの個体差が大きいため、年代や時計の型番などによっては出やすいものもありますが、まったくそのように感じられないこともごく普通で、大きくグラグラと動くもののほうが珍しいと言えます。

 

 

巻き芯とリューズの位置と接続方法に起因するもの

ぜんまいを巻く際に、巻き芯・リューズの固定が少し頼りなく、巻き芯がグラグラするように感じられるものがあります。
これは、形は腕時計とは言っても、懐中時計時代からの作りの流れを汲んでいるために起こります。
ケース側にリューズと巻き芯がセットされていて、それに機械を差し込むという作りになっているためです。
機械を外した状態、ケースと巻き芯・リューズだけの状態で巻き芯・リューズを触ると、巻き芯はグラグラと動きます。

懐中時計時代ではごく一般的な作りであったものですが、懐中時計では巻き芯が通るパイプ部分の長さが長かったため、パイプの長さという線での固定ができていたため、しっかりと固定され安定性があったため、同様のことは感じにくくなっています。
懐中時計のケースと同じ作りを持つ腕時計を比べていただくと一目瞭然ですが、グラグラとした感じを受ける腕時計では、巻き芯が通るパイプ部分がほとんどない・あっても非常に短いため、同じ作りで比べると固定・安定性に欠けています。

 

ケースに「短い巻き芯」が固定されているだけ、それは言い換えれば、ケースと巻き芯の固定部分、支点となる部分1点のみで固定されているため、支点と左右等のように何点かで固定する方法・線で固定する形とは違い、完全に動かないような固定ではありません。
短い巻き芯を機械側の穴にわずかに差し込んで噛み合わせている、という作りであるため、差し込む先の穴の大きさ、差し込む芯の太さや長さの違いによって、少しあそびができてしまうため、これもグラグラする原因となります。

【 ケース側に固定された巻き芯 】
ケース側に固定された巻き芯

【 巻き芯を差し込む穴 】
差し込むだけで、巻き芯を固定するための部品はありません。
巻き芯を差し込む穴

同様にこのような作りが原因で、リューズを少し押し込んで巻いていただいたり、巻きにくさを感じられるものがあります。
巻き芯の長さと太さ、そしてそれを受ける穴の部分とのかみ合わせの問題で、少しサイズ等に違いがあれば、例えば短ければ少し押し込んでいただく必要があったり、太さに違いがあれば、少しぐらついた感じが出てしまうものもあります。
ただ単に穴に棒を指しているだけのような作りですので、このようなことが起こりますが、これ自体は、この時計の作りであって、故障ではない部分です。

 

上記のような古い形に比べて、後年の腕時計の作りになると、機械側で巻き芯を固定する作りになっています。
巻き芯は機械自体に固定され、さらに巻き芯が通る長さのあるパイプ部分でも、点ではなく「線」で固定されていますので、複数点・より長さのある固定になりますので、より固定・安定感がでます。
機械自体がぐらぐらしていなければ、巻き芯・リューズに違和感を感じることはあまりありません。

【 機械側で巻き芯を固定するタイプ 】
巻き芯がしっかりと機械の深いところまで届き、かつ巻き芯が抜けないように留める部品が備わっています。
機械側に固定されている巻き芯

【 巻き芯そのものの違い 】
巻き芯自体も長く、機械側で固定するために凹凸が付けられています。
それに比べて、巻き芯をケースに固定する古いタイプでは、凹凸が無いまっすぐな短い棒です。
年代の新しい巻き芯

 

 

それ以外の原因

 

機械とケースを固定するネジが無い

時計によって違いますが、機械とケースをネジで固定するタイプの場合、ただ単にネジが無くなっているために、機械がぐらぐらしていることもあります。

機械とケースを固定するネジ

 

部品のサイズや機械そのものが違うことによるもの

巻き芯が細い場合や、巻き芯の通る筒の穴が広すぎる場合など、部品のサイズ違いや、時計の機械がそのケースのものではない別物である場合などが原因で起こることもあります。

 

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