アンティークの魅力


アンティーク時計だからこその魅力と、現行品の時計との違いを知る。

コチコチと時を刻む時計の鼓動

コチコチと語り掛けるような時を刻む音。
それが時計本来の「小さな声」。
この音が機械式時計の証。
時計の中で小さな部品たちが動き、1秒そしてまた1秒と時を刻んでいる音なのです。

電池式・デジタル時計が出回り始める1960年代までは、1900年前後の懐中時計全盛期からそして腕時計と形は変われども、時計を持っている誰もの腕でそしてポケットで、この小さなコチコチという音が響いていたものです。

銀の懐中時計と木のボールペン

このなんともいえない小さな音、時計の声であるともいえる懐かしさのある響き。

その毎日響く小さな音色は、子供の頃、母親が台所で響かせていた、包丁でまな板を叩く音のような懐かしさを感じさせます。
これこそが機械式時計の証です。
職人が作り上げ、手をかけて伝えられた温かみのある芸術品。
現代では珍しくなった、そんな人間らしいところがアンティーク時計の魅力です。

時計を動かす子供

アンティーク時計はしばしば機械式時計だと言われますが、その理由はこの音を響かせる全ての部品が「デジタルに頼らない」小さな部品だけで作られている点からそう呼ばれています。
なかなか時計の中の機械まで見ていただくことはできませんが、小さな部品がそれこそ1秒ごとに素早く左右に動き、その動きはまるで人間の心臓の働きのようです。
電池を使わずにぜんまいの動力だけで動いている部品を見ると、そこには人の温かみや芸術的なものを感じていただけるものでしょう。

時計の部品

こんな機械を楽しさを感じていただけるところがアンティーク時計の良さですが、さらにアンティーク時計に限っていえば、使う人には見えないはずの機械にもこだわりがあります。
どうしてこんなところにまで装飾や彫りが入っているのかと思ってしまう場所にまで、丁寧に彫り込みがされているのを見れば、当時の時計の作り手たちがどれほど丁寧に時計を作っていたのかがわかってもらえるはず。

現代のデジタル時計のように工業的に作られたものと違って、昔ながらの味わい・遊びが隠されているのを見ると、胸がときめいてしまうかもしれません。
さらにそれぞれの部品を見てください。
金色であったり銀色であったり、ここまできれいな部品が集まって時を刻んでいるのかと思うと、機械式時計の内部はまるで宝石箱のようです。

8日巻き時計

 

文字盤や針にも職人の技が光ります

この1枚のアンティーク時計の写真を、現代の大量生産された時計と比べてみてください。
金彩装飾、何かまったく違った印象を受けませんか?

それは例え、現在も存在している同じメーカーの、アンティーク時計と現行品の時計を比べた場合であってもそうなのです。
数字のインデックスから、さらには針自体の作りの違いまで。
どこか現代のものは、大量生産でどっさり作ってしまった印象を受けませんか?

金彩模様の文字盤と豪華な針

それもそのはず。
アンティーク時計が作られていた時代は現在と比べて、時間の流れも物流も全てがゆっくりであった時代。

それに比べて現代はスピードや安さが求められ、特に「売れるもの」に絞り込んで、新しいモデルやデザインが毎年のように売り出されているのです。
その点を考えただけでも、どうしてこのような物が作られていたのか、作ることができたのかを知ることができるでしょう。

昔の時計工場

生産技術や施設という面では、現代には遠く及びません。
それでも限られた中で人の手で時間を掛けて作られていたからこそ、現代では真似もできないようなものが作られていたのです。

現代では「壊れやすさ」というマイナス面で採用されない陶器でも、昔はマイナス面ではなく、艶があり色付けできる特徴を良しとしていたのです。
アンティーク時計には、その時計のためだけにデザインされた・作られた部品すらあるほど。
作りやすさや壊れにくさよりも、そのブランドの持つイメージや、時計のそのものの持つイメージが大切にされていたのです。

 

ケースの装飾に見る古き良き時代の芸術

アンティーク時計の魅力は懐中時計ならもちろん、初期の腕時計には装飾があり、機械式時計の全盛期と呼ばれていた1940年代になると、ケースの形自体にも、現代からは考えられないような素晴らしい特徴のあるものが数多くありました。
作り手と職人が主役だった時代、作り手の遊び心や時計に対する姿勢。それらがケースにも表れています。

イニシャル装飾の懐中時計ケース

金側・銀などの貴金属、非常に丁寧な彫り込みやデザイン。
今では作る費用が高すぎて作れない、職人がいないので作ることすらできない、現代では想像もできないような奇抜なデザインなど。
これらはアンティークならではの大きな特徴です。

現代なら採算性を考えるとメーカーが作れないようなデザインも、昔だったからこそ・作り手が時計を買い求める人たちの要望を聞いていたからこそできたものがたくさんあるのです。

綺麗な装飾が施された懐中時計のケース

アンティーク時計では、現代のほとんどの時計で使われているステンレスはあまり使われていません。
その時代になかったということもありますが、ステンレスは確かに強度や耐久性という面では優れていますが、販売店や宝飾店での加工という面が難しかったというもの理由の1つでしょう。

時代的に金や銀に人気があったことも理由の1つですが、金や銀・金張りなどの技術こそありましたが、これらの金銀という貴金属が使われたことで、アンティーク時計の「アンティークらしさ」がより強く伝えられることになりました。
ステンレスのようにいつまで経っても「変わらない」ではなく、貴金属特有の長い年月によってこそ培われる「味と深み」が加わることになったのです。

 

歳月とともに雰囲気を纏う時計たち

とにかく早く安く作るという現代の時計の作り方から考えると、アンティーク時計は作られた時から「特別だった」といえます。

そんな特別な生まれ方をした時計たちが、すでに50年・100年と長い年月を経て、さらには大きな戦争のあった時代などの大変な時代を以前の持ち主と共に生き抜いてきたのです。
壊れてしまった時に捨てられてしまってもおかしくなかったものでしょう。
デジタル時計時代に変わった時に、取り換えられていてもおかしくなかったものでしょう。

でも持ち主に「捨てる」という選択肢を選ばせなかったのは、これらの時計たちが作られた時代、時計自体が高価なものであり、また長く使っていただけるものであったことから、その存在が特別なものであったからでしょう。

懐中時計と古い本棚

どのアンティーク時計でも、ふっと手に持ってみると、まるで新品のようにきれいに磨かれた時計であっても、どこか現代の新しい時計とは違います。
それは目に見える違いではなく、時代や長い年月によって作られた雰囲気や品格であるのかもしれません。
こんな違いを楽しめるのも、アンティーク時計ならではだといえるでしょう。

 
 

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