チェーンの小物


懐中時計のチェーンに小物を付けて、自分だけの特別な1点ものに仕上げる。

実用と装飾を兼ねた小物が定番

アンティークチェーンは、その当時のファッションや使っている方の利便を図るため、いろいろな小物が取り付けられていました。
家族や恋人の写真が入ったロケットであったり、装飾性の高い豪華な飾りであったり、便利なように家の鍵であったり、取り付けられていた小物は、チェーンの持ち主によってさまざま。
懐中時計が誕生しチェーンが付けられ始めた当初は、鍵巻き式という鍵型をしたぜんまい巻きが必要だったため、ぜんまい巻きをチェーンの片側に、そして懐中時計をもう片側に付けて、懐中時計を持ち歩くことで利便性を高めていました。
古いアンティークチェーンを見ていると、付けられている小物から、当時の持ち主のことが想像できてしまいそうなほど、持ち主のこだわりや思い入れ、当時の暮らしぶりなどを感じることができます。

 

 

小物は取り換えられるもの

アンティーク好きな方の中には、チェーンに元からついていた小物にこだわられる方もたくさんいらっしゃいます。
これは「アンティークのオリジナリティを楽しむ」という面から考えると、もちろんそうしていただくのが良いと言えます。

では当時はどのように使われていたのでしょうか?
その一面を良く知ることができるのは、当店がお客様から直接時計や時計回りの雑貨を買い取らせていただく時。
時計や小物など一式すべて買い取らせていただくこともあれば、高価なものだけ売られた後で、残った鎖などの小物の処分を依頼されるお客様もいらっしゃいます。
その時にジュエリーボックスにチェーンと納められているのは、必ず複数のチェーンに合わせる小物です。
捨てずに大切にされていたのが当時の習慣。
チェーンに付ける小物も捨てられずに、いくつも残っていることがよくあります。

古いジュエリーケース

必ずと言って良いほど、チェーンの数よりも小物の数が多い、また小物によっては明らかに年代が違うのは、合わせる小物はその時々によって変えられていたことを物語っています。
勲章のようなメダルであったり、夫婦の写真であったり、子供の写真であったり。
歳を重ねるにつれて、持ち歩くものも変わり、そして好みも変わっていくのは、今も昔も変わらないことです。

元々付いていた小物を楽しんでいただくのもお勧めですが、当時の時計の持ち主たちと同じように、好みやその時々に応じて小物も取り換えていただくと、より自分好みのチェーンになり、自分だけの個性を楽しむ1本になってくれることでしょう。
昔から小物は取り換えられていたものと考えると、ぜひ取り換えて楽しんでいただくことをお勧めします。

 

 

定番の小物の種類

 

金属のアンティーク飾り

チェーンに付けられた定番の小物の1つで、きれいな装飾やデザインが施された金属の小物で、いろいろな形のものがあります。
小物の下側(底面)にイニシャルやマークなどを彫り、後述しますが封蝋印としても使えるものがあります。

金属の小物

 

水晶やガラス・石やカメオを用いた飾り

ナイトや女性などをモチーフにした彫り込みのある石やガラス飾り、カメオやきれいな形をした水晶や宝石など。
これも定番として付けられた小物の1つです。

石とガラスの飾り

 

写真入れ・ロケット

チェーンに付けられた定番の小物の1つで、小さな写真を入れる金属製のロケットが付けられていました。
写真が入っている状態で見つかることも多いため、夫婦や子供・家族の写真などから、チェーンを持っていた個人の思い入れや身分や暮らしぶりなどをはっきりと知ることができる、アンティークとしてはとても趣のあるものの1つです。
ケースはアンティークらしいきれいな装飾が施されているものが多く、一般的なロケットと比べて、サイズが2センチほどと小さなものが多くなっています。

ロケットに残された昔の写真を入れたまま楽しむも良し、捨ててしまうのは忍びないという方は、ご購入いただく際に抜いて送ってもらうようにご依頼ください。
ご自身で写真を入れる場合は、入れられる写真のサイズがかなり小さいことと、防水面が利かないものが多いこと、写真を留めるガラス面などが無いものも多いため、思入れのある写真を「見る」ためではなく、タイムカプセル的に想い出の写真として仕舞っておくといった感じで使っていただくのが良いでしょう。

ロケット・写真入れ

 

鍵巻き・ねじ巻き

鍵巻き式の懐中時計のぜんまいを巻き上げるための鍵です。
鍵巻き式の懐中時計では付けておくのが定番でしたが、リューズ式の懐中時計が主流になっても、鍵巻きを飾りとして付けておくのもおしゃれだったようです。

 

小型のナイフ

古いアンティークナイフは外側に装飾の入っているものがあり、アンティークらしさを感じます。
懐中時計の時刻合わせやぜんまいを巻く際に、蓋を開けるためにも使われていました。

小型ナイフ

 

家の鍵

おしゃれというわけではありませんが、当時は毎日持ち歩かれていた懐中時計なので、鍵と一緒だと便利だということで実用面で付けられていたようです。
古い鍵には味のあるデザインがあり、現在ではファッションアイテムとして、そのまま付けておかれる方も多いようです。

 

方位磁針や葉巻切りなどの趣向品や機能品

実用を兼ねた装飾品ということで、様々なものが取り付けられていました。
アンティークの小型方位磁石や薬入れ、喫煙具も定番の小物で、葉巻切りやマッチケースなども人気がありました。
時代的にボールペンやシャープペンなども無かった時代ですから、鉛筆を取り付ける鉛筆ホルダーなども良く合わせられています。

 

 

シーリングワックス・封蝋印としての利用

これをご存知の方は、かなりのアンティーク通か西洋通です。
日本ではあまりなじみの無い習慣ですが、西洋では昔から良く使われていたもので、封筒に封印をするための手法です。
シーリングワックスを使って、封筒や書簡に封をする場面は、中世やそれ以降の時代を題材にした西洋映画で時折登場します。
蝋(ろう)を溶かして封筒の開け口に垂らし、日本の印鑑のようなものを押し付けて、蝋に「自分だけのオリジナル」署名のような型を付けて封印するものです。
日本でいうなら印鑑、昔で例えるなら大名などが使っていた花押に似ています。

封をされた書類

懐中時計チェーンに付属している飾りの中に、英語のイニシャルや記号などが刻印されたものがあります。
これらは、ただイニシャル・記号・マークであっただけでなく、実はワックスシーリング・封蝋の印としても使われていました。
金属でできた飾りの形はさまざま、さらに刻印されている文字や記号は世界中を探しても、たった1つしかないオリジナル。
送り主を証明するには、これほどオリジナリティの高かったものは無かったわけです。
さらに懐中時計という、いつも持ち歩くものと一緒に付けられるチェーン、それについている飾りを使えるということは、便利さも合わせ持っていたわけです。

金属飾りの封蝋面

金属の小物であれば、上記の写真のように平らな底面にイニシャルなどの彫りがあるもの、石にも同様に模様やイニシャルが彫られている場合があり、溶かしたロウに押し付けることによって、その模様を浮き上がらせることができます。
凹凸が深いほどはっきりと浮かび上がりますので、金属面にあるイニシャルだけに限らず、石に彫られているデザインやガラスの女性像なども綺麗に浮かび上がります。

 

 

シーリング・封蝋の仕方

押したい印をすでにお持ちであれば、まずはシーリング・封蝋用の「色の付いた蝋」を手に入れてください。
日本ではあまり一般的ではないものですので、見つからない場合は、インターネットなどでお探しいただくと良いでしょう。
少し品揃えの良い文房具店や百貨店になら必ず置かれているはずですので、店員の方に尋ねてみてください。
ご購入いただく際は、蝋の芯にロウソクと同じように芯が入っているものが溶かしやすいのでお勧めです。
詳しいシーリングの仕方は、お買い求めいただいた際に説明書が付いているかと思いますので、ここでは簡単にだけご説明いたします。

封蝋セット

 

手順①

色の付いた「蝋・ろう」に火を当てて溶かし、印を押したい紙の上に蝋を垂らしていきます。
蝋の量は、お持ちの印の大きさよりやや小さい程度でもかまいません。
垂らす量や面積は、何度か試していくとわかってきます。

 

手順②

蝋はすぐには固まりませんので、あせらずに印を蝋の上に押し付けます。
朱肉で押す印鑑のように、あまり強く押す必要はありません。
ロウが軽くつぶれる程度で止めてください。

 

手順③

5~10秒ほど待って蝋が固まってきたら、印からはみ出した蝋の端を爪などで軽く押さえながら印をはがします。
ロウを押さえずに印を引っ張ってしまうと、ロウが一緒に取れてしまうことがあります。
これで封蝋は完了です。

シーリングワックス

 
 

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