銀の懐中時計に彫られた鳳凰

時計を使い続けない、という選択肢


修理をする・使い続けるためには、定期的な保守・費用が必要になります

動いていない時計、どうしよう?

形見で譲られた時計、昔は使っていたけれど、しばらく使う予定がない時計。
修理しないともったいない、動かしてあげないとと思われてしまいがちです。
でもそこには、「修理をしない」「時計を使い続けない」という選択肢があることも覚えておいてください。

その理由は、まず第一に、修理をするにしても使い続けるにしても、そこに継続的に保守費用が発生するということ。
今、修理をする・オーバーホールをしてお金を掛けて頂いても、何年かのちには同じだけの費用がかかることになります。
比較的新しい時計であれば、あまりメンテナンス・修理も必要がないかもしれません。
ただ1960年代以前の時計となると、古くなるにつれて、また機械の良し悪し・劣化・部品自体の問題等、色々な要素があって、メンテナンスも頻繁になりがちです。

テーブルの上の腕時計

例えば今後20年、その時計を動かしてあげるとして、3年でメンテナンスが必要になるとすれば6回ほど、5年に1度とすれば4回はメンテナンスを受けなければならない計算になります。
時計によってメンテナンスに掛かる費用も違いますが、その金額は、新品の良い時計が買えるくらいの金額になります。
もちろんそれ以外にも、ぜんまい切れや故障があれば、追加の修理費用も発生します。

この金額に問題がなければ、それ以上に修理をしてあげたい、使ってあげたいという気持ちが上回れば、ぜひ修理をして使ってあげてください。
ぜんまいを巻いて頂いて、ただコチコチと動く姿を見て頂くだけでも良いでしょう。
機械式時計・クォーツ、デジタル時計、形見の時計や記念の時計など、人それぞれに大切に思う1本があるものです。

時計を修理する手

故障をした時に修理をするべきか?、そこには「修理をしない」という選択肢があります。

気に入って購入した時計や、形見として譲られた時計など、入手された経緯や理由も様々でしょう。
時計を使い続けるに当たって、持ち主である貴方の状況というのも、年齢を経るにつれて変わっていくものです。
収入が変わることによっての懐具合の事情であったり、スーツを着る必要がなくなったり、今の年齢に時計が似合わなくなったり、老眼等の影響で時間が見えにくくなってしまったり。
大切な時計だったから、気に入っている時計だったから、治してあげたほうがいいな。
そう思われるのは、もちろん当然のことでしょう。

しかしながら、勇気をもって考えていただきたいのは、「時計を使い続けない」という選択肢もあるということ。
修理をするには、その状態に応じて、どうしても費用がかかってしまうもの。
もしほとんどお使いでない状況になっている、もしくは修理をする余裕が無い時には、思い切って「使い続けない」という選択を取っていただくのも、時計店の立場からすると正しい選択だと思います。

鉛筆削りと懐中時計

今修理をしなくて良いかもしれない

時計は「今修理をしないといけないのか?」、これについては必ずしもそうではありません。
判断は難しいところですが、進行性の問題なのか、その状態から変わらない問題なのかが一番大きなところでしょう。

例えば、水没・錆びであれば、日数の経過とともに錆びが進行していきますので、できるだけ早い対応が必要です。
ケースの中に水が残っている状態であれば、それこそ数日で部品によっては朽ちてしまうことがあります。

急がないで良い例を挙げると、譲り受けられた時点で、十年・二十年と動いていなかった時計であれば、すでに進行性の問題は収まっているはずです。
それ以外の問題は、部品などの物理的な問題のはずで、今更急いで修理をしていただく必要は無いものだと考えられます。
それと同様に、落としてしまった、部品に破損がある状態であれば、動かすことはできませんので、基本的には現状から悪化することはないと言えます。

テンプを外した懐中時計の機械

あくまで極端な例えになりますが、現状で大きな問題がない、もしくは大きな問題があっても、悪化してしまう進行性の問題ではない場合。
天芯折れという心臓部分の軸が折れてしまっている状態や、歯車の歯が欠けている、または部品の一部が欠損している状態だったとすると、それは物理的な「破損」という状態で、10年後もそれが変わることはありません。
今、修理をせずに置いておいても、状況的に大きくは変わらないからです。

悪化する問題でなければ、今すぐに修理をしても、5年後に修理をしても同じだと言えます。
今決めて頂かなくても、修理をしたい・この時計を使いたいと思われるまで、修理をしないというのも1つの手です。

10年・20年先でも修理ができる可能性がある

どの時計でも「必ずしも治る」というわけではありませんが、メーカー製の時計であれば、使われている機械を特定するための型番・キャリバーなどが刻印されています。
それがわかる時計であれば、10年経った時にも、同じ型番の部品もしくは機械を取り寄せて、修理をすることができる」可能性があるということなのです。
そういった時計であれば、無理に修理をしなくても良いと思われませんか?
もちろん、見えない部分で錆びなどが出ていれば、錆びは進行性でその影響が広がる可能性はありますが、そうでなければ、また使いたいと思っていただいた時に直していただければよいのです。

箱に入った昔の時計部品

100年以上前に作られた時計の修理を、お預かりすることがありますが、メーカー製の時計であって機械の型番などが特定できるもの、部品の製作ができるものであれば、部品の取り寄せや機械自体の取り寄せを行って、今でも修理をさせてもらっています。
中にはメーカーの特定ができないもの、部品の製作ができないものなど、修理ができないものもありますが、メーカー・型番がわかれば、かなりの確率で取り寄せや修理が可能です。
もちろん時代の流れで、替えのための部品や機械の流通量というのは、年々減っていきますが、それでも今故障している時計は、10年後・20年後に修理ができる可能性もあるということです。

懐中時計と木のケース

修理をせずにただ保管しておくのも悪いことではありません

御父母様、ご祖父母様が使われていたから、大切にされていた時計だから治したい。
それはもちろん大切な気持ちです。

ただもし修理することを悩まれる・躊躇されるようでしたら、そのまま置いておいてあげるのも決して悪いことではありません。
置いておかれるだけでも、思い出はそこに残っています。
いつでも修理をすることできる、使い続けないかもしれない。
時計のことで、そのように悩ませてしまうようなことがあれば、その時計を残された方も本意ではないはずです。
そういう時には、心地よく時計を飾ってあげればそれで良いのではないかと思います。
修理をしないこと=大切にしない、ではありません。

クッションの上の懐中時計

使っていない時計や使用頻度の少ない時計、または懐事情が厳しい時に、治していただく必要がないように思えてきませんか?
動かなくなってしまった時計を、記念に飾っておいていただくだけでも良いでしょうし、大切に仕舞っておいてもよいわけです。
10年後、20年後、また使いたくなった時に、余裕ができた時に、修理できるお店を探して、また使い続けることもできるというわけです。

修理の難易度・費用は年数の経過とともに上がります

ただし、基本的には年数の古い時計ほど、また時代が進めば進むほど、修理費用は高くなっていきます。
例えキャリバー番号など、情報の有る機械であっても、年数が経てば、部品の入手は難しくなっていきますし、それとともに部品の値段も上がっていきます。
また同様に、修理をする技術者の費用も高くなっていきます。

キズミと技術者

70年代頃の時計によくみられるものですが、分解・組み立てごとに破損の可能性がある作りのもの、構造上どうしても摩耗しやすい物。
時代的なことで、制作や代替えの利かないプラスチック部品が使われていた時代のものなど。
比較的時計の数が出回っていた時代になると、今度は修理を希望される人も多くなりますので、その当時に作られた残っている部品というのも、新しく作られることはありませんので、破損しやすい・必要な部品ほど無くなっていきます。
例えば、部品1つが今1万円だったとして、10年経てば時価になっているかもしれません。
将来的に修理をしてあげようという場合には、そういった点も少し考えておいて頂く必要はあります。

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