正装時における時計の着け方


昔と現代ではまったく違いますが、由来やマナーなど知っておくと便利です。

フォーマル・慶弔時の時計の着け方ご存知ですか?

フォーマルな服装での時計の着け方、女性のドレスなどでの時計の着け方をご存知ですか?
慶事・弔事でのルール、お葬式や弔事での特殊な懐中時計の着け方など。
今では知る人も少ない特別なことや、踏まえておいたほうが良いことをご紹介します。

フォーマルパーティでの男性と女性

昔のマナーと着こなしを知る

正装の基本は1930年頃、時計などもアクセサリーとして認められた頃の服装・マナーが現在でもお手本になっています。
海外でもそうですが、Black-Tie(正装)が求められる場合でも、国賓クラス・記念式典などのよほどの場合でない限りは、昔のようなきっちりとした正装やマナーは影を潜め、「ある程度昔のマナーに沿う」といった着こなしが求められている程度になってきています。

男性の正装例

男性で言えば、戦前には正装というと「燕尾服」が当たり前でしたが、現在では正装といえば「タキシードもしくは黒のスーツ」を指すように変わっています。
男性はスーツなどの形はほとんど変わりがありませんが、女性のドレスや装飾品は時代共に大きく変わっています。
時計も慶弔のTPOに応じ、昔の決まりをある程度踏まえて、今風にご自身の趣味・趣向に合わせて着こなしていただくことをお勧めします。

装飾品の金・銀を混ぜない

時計などの装飾品一般に言えることですが「金・銀を混ぜないのがマナー」で、カフスが銀で時計が金などのように金銀を混ぜず、アクセサリーは金銀のどちらかで統一するのが望ましいとされています。
これは昔、高貴な家柄の人たちが裕福さの象徴として、身に着けているものを見せるために、家宝やオーダーメイドの装飾品を作る・着ける際に、統一された貴金属や宝石を使った装飾品を好んだことから。
18世紀頃には、紳士の着こなしとして、セット物の装飾品が用いられるようになったことが起源とされています。

金の懐中時計に銀のチェーン

ただこのあたりは時代の流れで、今はこういったことをご存じの方もほとんどいらっしゃいません。
必要な場所では基本的なマナーを守って頂いて、個人的に楽しんで頂くなら、色を混ぜて着けて頂くのも良いのではないかと思います。
女性の場合は、金銀の混ざった装飾品・貴金属も一般的ですので、古すぎる習慣に倣うよりも、現在のファッションに合わせて楽しんで頂くのがお勧めです。

無難に銀色の一択

日本の場合は、銀色・シルバーの時計が好まれる傾向にあります。
フォーマルな場や目上の方を敬うという意味合いから、懐中時計・チェーンもシルバー、腕時計をする場合も時計はシルバー・尾錠もシルバーが選ばれることが多く、無難なところではシルバー・銀色の一択。
西洋文化が取り入れられた頃の、日本独特の階級制度や、謙譲の美徳によって、シルバーを着けることが望ましいとされたものだと考えられます。

海外では16世紀頃の王侯貴族階級に好まれたことから、時計が発明された18世紀以降は、富の象徴として、金色・ゴールドの懐中時計が好まれるようになりました。
現在の時計全般の流れとしては、着けやすさ・時代の流れとして、シルバー・銀色が好まれるようになっています。

懐中時計を着ける紳士

男性が知っておいたほうが良いこと

基本的に男性の場合は、「シンプルかつエレガントに」ということが求められます。
慶事の場合は基本的には「時間を気にしない」ことがマナーになりますので、時計をこれ見よがしに目立たせることはタブーです。
時計を着ける場合は、腕時計ならドレスウォッチで見た目がシンプルでエレガントなもの、また懐中時計ならベストを着る場合はベストのポケットにあまり目立たないようにしまっておくのがマナーです。

1900年頃の懐中時計のチェーンを身に着けた男性の写真

男性のスーツ等フォーマルな装いと腕時計の着こなし

下記の写真は、1940・50年頃の時計広告から。
男性の腕時計は、時計に丸や長方形など形に違いはあるものの、基本的には革もしくは金属バンドです。
スーツやシャツといった、フォーマルで利用される服装の形は、昔から変わっていませんので、現代と比べて頂いて特に難しいところはありません。

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女性が知っておいたほうが良いこと

女性の場合は、男性よりもエレガントさが求められます。
宝石のちりばめられているもの、ジュエリーとしてエレガントさのある見た目を備えた腕時計がお勧め。
その場に合うふさわしい時計が無い場合は、服装や場に合わない時計をするよりも、着けない方が無難です。

1900年頃のジュエリー・ネックレスを身に着けた女性の写真

男性の場合と同じで金銀は混ぜないのが基本ですが、現代では金と銀が一緒に使われているジュエリーが多くあります。
見た目に違和感がなければ、金銀をうまく合わせて使っていただくのも、現代での着け方として良しとされるべきでしょう。

戦前の男子優先という考え方から、西洋でも東洋でも昔は男性のほうが華やかに飾り立てるという時代もありましたが、現代ではどんな場所でも女性が主役です。
現代のマナーに反しないものであれば、服装も華やかにそして時計も華やかに着飾っていただくのが良いでしょう。

女性のドレス等フォーマルな装いと腕時計の着こなし

下記の写真は、1940・50年頃の時計広告から。
女性の腕時計は、アンティーク時計の時代はサイズの小さなものが主流です。
写真をご覧頂いてもお変わり頂ける通り、バンドも紐タイプや幅の細い金属のバンドが主流。
ドレスなどの正装に合わせても、その姿に馴染むような上品さがアンティーク時計の特徴です。

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昔の女性の懐中時計の着こなし

懐中時計時代は、懐中時計も貴金属などのジュエリーも、持つ人のステータスを表す「見せるもの」。
女性用が持つ懐中時計も、見える位置に着けられていました。
具体的には、ブローチやネックレスに取り付ける形で、それ一式として身に着けるジュエリーになっていました。
下記の「当時の女性が身に着けている写真」のページをご覧頂くと、その当時の姿をご覧頂けます。

昔の実際に身に着けた写真はこちらのページへ

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上の写真のように、当時のものを現代でお使い頂くのは非常にエレガントで良いものですが、ブローチやネックレスは、劣化や金属疲労など強度の点で少し心配な点はあります。
ネックレスやブローチの留めの部分は強度をご確認頂き、念のため「落ちない」ように事前に手を打っておくのが最善。

予防的な対応としては、落下防止の留め具や細いチェーンを追加するという手があります。
下の写真は、懐中時計をはめ込んで腕時計として使うためのバンドですが、懐中時計が落ちないように、細い隠しチェーンが付いています。

懐中時計を腕時計として使うためのバンド

お葬式など弔事での懐中時計のマナー

懐中時計が身に着けられていたのは、1900年頃で今から100年以上前。
その当時のマナーは、現代よりもちろん厳格なもので、弔事にはこのような黒色の懐中時計のチェーンが使われていました。
一般的に考えて、チェーンは見える位置に着けると目立ってしまうもの。
現代では弔事では見せないのが良いでしょう。
ただ懐中時計とチェーンを、こだわりとして着けておきたいという方には、「当時の本式」として、このような黒いものを着けるという選択肢もあります。

黒い紐状の懐中時計のチェーン

下記はガラスと紐を合わせた素材で作られたもので、金属で作られたT字のバーも黒く塗られています。
また当時の「髪の毛」で編まれた紐も、落ち着いた色合いで同様の用途にお使い頂けます。

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