カーベックス 形やスタイルの特殊なグリュエンのアンティーク腕時計 【1950年頃】金＆黒

一世を風靡していた時代もの

「カーベックス」、現在では時計の形を表すスタイルの名前として知られていますが、元々はグリュエンの「カーベックス」という時計のモデルの名前のこと。
４０年代からこの当時、時計のデザインでも秀逸な形を生み出したグリュエンの、まさに最高傑作といえるモデルでした。
それはデザイン性に優れていたグリュエンという点もそうですが、「曲線」にこだわったその作りが支持されたといえるもの。

この時計もそのカーベックスというデザインをしっかりと表現していて、ケースに風防・機械もカーブをしていますが、そんな中でも見どころは、カーベックスの中でも特殊な金と黒という、黄金の色の対比を使ったものであること。
針の形もこの時代ならではの上品なスタイルで、時間を表す数字の形も、この時計のデザインにとても良く合っています。
そしてこの時計に限って言うなら、カーベックスとしては５０年頃のもので、後期に当たりますが、それだけにデザインにちょっとした工夫が凝らされているところ。
ケースの上下の左右をご覧頂くと、杭の頭のような丸い箇所が４カ所、時計のデザインとして組み込まれているのがお分かりいただけるかと思います。
カーブをさせること、さらにそれ以上に趣向を凝らしてモデルを高めていく、そんなグリュエンの姿勢が楽しめる、楽しんで着けて頂ける時計かと思います。

時代に名を残した「カーベックス」

腕時計の歴史が始まったのは、おおよそ２０世紀の始まりの頃。
１００年に及ぶ長い歴史の中で、懐中時計のスタイルを踏襲したものから始まり、金属の加工技術の高まりから、より現代に近いものへと移り変わっていきます。
その長い年月のなか、本当にたくさんのメーカーが生まれ、数々の時計が作られてきましたが、この時計グリュエンのカーベックスは本当にその長い歴史の中でも特殊なもの。
機械式腕時計が最も華やかで最も栄えた４０年代頃。さまざまなメーカーが競うように新しい技術やデザインを発表し続けていました。
そんな中、グリュエンによって腕にフィットするように時計自体をカーブさせてしまった時計が発表されます。それがこのカーベックス。

時計自体を腕にフィットするようにカーブをさせ、さらに中の機械までもケースに合わせてカーブをさせてしまうというこだわりよう。
時計の本体がカーブしているという非常に斬新で、他のメーカーを完全に出し抜いたアイデアと、そのカーブを利用したエレガントなデザイン性の高さは、カーベックスの発表と同時に人々の中に「カーベックス」という名前を刻みつけ、グリュエンというブランド名をもはるか高くに押し上げました。
このカーベックスはその後、時計史に新しい一時代を作り上げ、カーベックスが高級時計の代名詞にもなったほど。
さらにこの時代を境に、時計がカーブをしているものを「カーベックス」スタイルと呼ぶようになったのです。
長い歴史の中でも、１つの商品名がスタイルの名前になったものは、本当に一握りでしかありません。
かつその名前が広く知れ渡り、現在でも使われているものとなると、このカーベックスこそが代表格だといえるでしょう。

店主のワンポイントと評価

総合評価　A+

色やデザイン的に、時計としてもとても存在感のある１本。
黒に金という色味の上品さ・格好良さはもちろん、デザイン的にちょっとひねりを加えてあるのは、まさに時計の「個性」。
世の中に「カーベックス」スタイルの時計は数あれど、本物のカーベックスで、そしてデザイン的にも特殊な１本。
ありふれた時計を着けて頂くよりも、楽しみを感じて頂きながら着けて頂ける腕時計かと思います。
サイズ的にはカーベックスシリーズの中でも、少しく小ぶりですので、女性の方も楽しんで頂けるサイズです。

状態　A

写真で拡大したものを掲載していますが、文字盤に若干軽い経年劣化は見られます。
ただあくまでそこまで拡大してのもので、肉眼ではほとんどわからない程度です。

希少性　A

個性が好まれる現代では、根強い人気のあるモデルで、その中でも特殊な形・色のものです。

贈り物　A

当時のメンズとしては少し小ぶりな部類になりますが、デザインが個性的でとても面白い物ですが、それだけに若干好き嫌いの分かれるものかもしれません。

備考