英国王室御用達の名家
英国の時計ブランドといえば、燦然と輝くのは「王室御用達」というお墨付きを持っていた「ベンソン」が一番よく知られるところでしょう。
このベンソン、実は日本でも経済界ではちょっと知られたもので、日本の戦後復旧の立役者となった白洲次郎が、英国留学から好んで使用していたものとしても知られています。
当時としては誰でも簡単に行けるものではなかった海外、また渡英という形で、そのような場で出会うものとお考えいただくと、どれほどのメーカーであったのかもご想像いただけるのではないかと思います。
第一次世界大戦などの災禍によって、時計の製造メーカーから、時計宝飾ブティックへと変わっていきますが、昨今のデジタル化の流れに反するように、英国のアンティークブランドとして、改めて見直され非常に人気の出ているメーカーでもあります。
博物館に飾られるような風格と威厳
このベンソンの腕時計は、一目見ただけで取りつかれてしまうような、荘厳ともいえる風格と魅力を備えています。
作られてからすでに100年以上が経ちますが、その過ぎ去った年月のすべてが、高級なブランデーが年を経て熟成するように、時計に風格を与え味わいを与えたかのようです。
そこに置いてあるだけで、時計の放つその威厳と芯のある雰囲気がにじみ出てくるように伝わる逸品。
手に取ってみたいという衝動を、強く突き動かす魅力。
腕に巻いて頂いた時に、手にしてよかったと心から満足してもらえるものでしょう。
黒い文字盤に銀のケース、この色の組み合わせがやはり秀逸。
この2色の組み合わせは、古来からの定番ですが、定番というだけではなく、時代が変わった現代でも好まれる色褪せない組み合わせ。
また時計のケースをご覧いただくと、いわゆる一般的な、現代に見られる「バネ棒」で留めるタイプではないことがお分かりいただけると思います。
これは腕時計の初期に見られる非常に特別な作りですが、その中でも一段と特殊・古い形のもので、ラグの部分がケース側のピンを中心に動くようになっています。
直線的なラグとは違い、より腕にフィットする作りになっていることはもちろん、ラグの形状も細部まで非常に丁寧に作られたもので、その形自体も格好良く、こだわりを感じられる部分かと思います。
文字盤にあるベンソンの名前もとても魅力的で、J.W.BENSONのJはJamesジェームス、Wはウィリアムと歴代英国王にも多く使われた名前の組み合わせ。
そしてベンソンの特徴の一つとして、この時代から後年まで一貫してこだわっているのが、ENGLAND(英国)そしてロンドンという地名。
ロンドンという地名はベンソンの名前と1つのセットのようなもので、時計の顔に描かれるその文字の組み合わせは、ベンソンならではのもので、その時計が特別であればあるほど魅力的に感じられます。
また時計のサイズとしても、厚みまたサイズも当時としては大きめの部類で、サイズには表れない大きさを感じさせてくれるもの。
これからのちの時代に作り出される時計と比べても、実寸としてやや大きめなのも魅力の1つ。
アンティーク時計の中には、直径が非常に大きな腕時計もありますが、そのほとんどが懐中時計を後世になってから腕時計へと作り替えたもの。
この腕時計のように生まれながらにして腕時計であったものは、懐中時計から腕時計への過渡期に作られたものとしては非常に貴重でかつ希少なものでもあります。
店主のワンポイントと評価
総合評価
さまざまなアンティーク腕時計はありますが、高貴な雰囲気漂うベンソンというブランド名にこのデザインの組み合わせ。
時計自体の格好良さは本当に特別なもので、手に取っていただくと、時計の魅力がふわっと花開くかのように伝わるものです。
非常に魅力的な完璧な姿ともいえる腕時計ですが、惜しむらくはまさに玉に瑕と言えるものですが、文字盤に1箇所欠けがあります。
状態
拡大した写真でご確認いただけますが、文字盤の10時付近に欠け・ヒビがあります。
ケースの表側・風防を付けた状態では、肉眼ではほとんど見えないほどのもので、写真によっては見えないくらいの状態です。
これが無ければというものですが、それはまた反対の言葉で、「これがある状態でも」その魅力が色褪せるものではないというほど、それ以外の状態や雰囲気の良いものです。
希少性
非常に珍しい希少なもので、ここまでの状態のものはなかなか手に入りません。
贈り物
時計としては非常に希少なもので、どなたにでもお勧めできるものではありません。
ですがこの時計の魅力に惹かれ、英国ベンソンの時計に惹かれるなら、非常にお勧めできる1点であるといえるでしょう。
コレクションに入れて宝物にしておきたい時計で、他の方への贈り物ではなく、ご自身への贈り物として選んでいただくべき1点かと思います。
備考
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