マニアも唸らすウォルサムの魅力
当時の時計の本場といえばスイスですが、大きな国家・経済圏の形成とともに、時計産業がアメリカにも移っていくことになります。
機械の貴重な製造技術・ケースを製作するメーカーなども、その大きな流れに沿って動いていきました。
そんなアメリカ初期の時計メーカーを代表し牽引した1社が、この懐中時計を作ったウォルサム。
今でも「懐中時計」では、特に人気の高いメーカーの1つ。
それは当店で販売させて頂いている時計をご覧いただいても、ご覧いただいているこの商品からもお分かりいただけるはず。
懐中時計時代の作には、その姿の美しさから、一目ぼれをされる方はもちろん、マニアの間でも人気があることでも知られています。
またコレクションとしても、懐中時計時代からその後の腕時計時代、第一次・第二次世界大戦の軍用時計の供給も担ったメーカーということで、幅があり楽しめるメーカーになっています。
まるで絵画のような美しさ
この懐中時計については、その一つづつの魅力を語るよりも、写真が全てを雄大にかつ繊細に語ってくれる1点でしょう。
まずはぜひ写真をご覧ください、とお伝えするばかりですが、やはり一番の特徴は、この美しい文字盤にあるでしょう。
白く輝くキャンパスに描かれた、たおやかで美しい花。
そこに装飾品のジュエリーとしての美しさも、組み合わせて鏤めた輝かしさ。
それぞれの装飾の配置もまた美しく、花の絵を半面にだけ描き、反対側には何も描かず空白として残されているのも、手法としてとても美しく好感の持てるもの。
時計のデザインとしては、インデックス(数字部分)の装飾は、ルビーを鏤めた金彩装飾、これは変えられない・譲れない部分でしょう。
これだけでも非常に美しいものですが、それに合わせる「絵」としては、果たして全面に描いてしまうのが良いのかどうか。
それに対する答えが、「半面」だけに花を描くという形になったものではないかと思います。
ここまで綺麗なものであれば、全面に絵を描いてしまえば、それはごちゃごちゃと込み入った外観になってしまうはず。
白い面を残すことで文字盤の白い艶も見せる、そしてそれぞれの繊細な装飾の美しさも際立たせ、とても良い雰囲気になっています。
ケースの表側また裏側の縁付近にも、細かな模様が施されていて、側面にはコインエッジの装飾。
また裏面の彫りや装飾も綺麗なもので、大きなサイズの懐中時計では、サイズに合わせるように、比較的大味なものになってしまいがちですが、とても綺麗なデザインに仕上げられているのもこの時計の良いところでしょう。
店主のワンポイントと評価
総合評価
とにかく「綺麗」という、この一言に尽きます。
丁寧に細やかに描かれている花の装飾が素晴らしく、葉や花びらの濃淡はもちろんのこと、花の中央には花粉も小さな金で表現され、茎には棘まで描かれています。
これはこの懐中時計が大型で、文字盤のサイズ自体も大きなもので、それを描き切れる面の大きさがあるというのも大きな理由です。
しかしながら、同系の他の懐中時計を比べて頂くと、サイズが大きくなることで、そのデザインや装飾も大味なものが、その大部分を占めています。
それらと比べて頂くと、この文字盤は小さな懐中時計に施される技法の細やかさそのままに、金彩装飾の部分も同様に非常に繊細な仕上がりになっています。
時代的なものですが、時刻合わせは剣引き式という形ですが、この時計の場合はより特殊な形を用いて合わせていただく必要があります。
鍵巻き時代の名残だと言えますが、表蓋を開いていただいて、1時の外側にある小さな金属のレバーを引いた状態で、リューズを回すと時刻を合わせることができます。
時刻合わせが終わったら、必ずレバーを元の位置に戻したことを確認してから、表蓋を閉めて頂く必要があります。(レバーを戻さないで閉めると、蓋がレバーに当たってしまりませんが、無理矢理閉めてしまうと、文字盤は壊れてしまいます。)
そのため、どなたにでもお勧めできるものではありませんが、ゆっくりと時間を取っていただいて、作りの違いそして手間を楽しんでいただける方のみにお勧めいたします。
状態
ケース側面にわずかに窪みはありますが、軽度のもので、時計全体を捉えていただくと、まったく気にならない程度のものです。
希少性
この年代のもので、このような作りを持つ「大型」の懐中時計自体が希少なものですが、装飾やモチーフ・仕上がり美しさという点でも珍しいもの。
かつ、このように状態の良いものというもの自体がほとんどなく、とても希少な1点になっています。
贈り物
装飾が本当に綺麗で、飾りたくなる・見せたくなるほどの美しさを備えた時計です。
贈り物としてお勧めできないわけがない、というほど良いものですが、時刻合わせには毎回表蓋を開いて頂く必要がありますので、その点をご理解いただける方のみにお勧めします。
備考
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