ひとときの限られた時代の産物
アンティーク時計の面白さは、その時代ごとに違った、その時だからこそという、それぞれに際立つ個性。
もう少し遅ければ、もう少し早ければ、存在しない技法や素材。
これとあれが一緒になっていれば、そのような「もしも」や「そうであればいいのに」という希望も、時代の違いによっては叶うことがない願いになる。
そんな願望と自身のイメージに合う時計を探し、また新たな魅力に出会う。
これがアンティーク時計の醍醐味とも言えるでしょう。
現代の新しい時計を見ていると、角が揃う完璧ともいえるフォームは、まさに一糸乱れぬ計算され極められた技術の成果。
それに比べると、アンティークと呼ばれる時代は、製造技法も完成されておらず、人の手によって仕上げられるものであるため、同じものでも仕上がりが違うという、不揃いな姿を見せるもの。
それでいて、アンティークに魅せられるのは、そこには現代では得ることのできない魅力が詰まっているからでしょう。
このウォルサムの腕時計は、そんな願望と新しい出会いを与えてくれる1点になってくれるかもしれません。
光り輝く美しい装飾に魅せられる
このウォルサムの腕時計の魅力は、懐中時計時代と腕時計時代の狭間で生まれた、どちらの魅力も併せ持った姿。
まるで五芒星と5つの小さな半月を合わせたような、花のような装飾が施された文字盤が非常に美しく、インデックスの外側の装飾との組み合わせも美しいもの。
また文字盤の中央から伸びる、美しい装飾が施された針は繊細で、文字盤中央の装飾と外側の装飾を繋ぐかのように、嫋やかな美しさを見せてくれます。
ケースの装飾もまたとても個性のあるもので、ケースの表面には立体的な模様が施され、ケース側面にも同様に模様が施されています。
腕時計のケースの形こそ、以降の腕時計にも引き継がれる形として生み出されていますが、後年にはこのような装飾が施された形のものはありません。
文字盤と針の華やかな姿と、個性あるケースの組み合わせは、懐中時計から腕時計への移行期、その一時代だからこそ、楽しんでいただけるものだと言えるでしょう。
店主のワンポイントと評価
総合評価
金の装飾に金の針、時間を見るという意味では見づらいものですが、分・秒単位で動く時代ではなかった時だからこその、ゆったりとした時間の流れが感じられるデザインではないでしょうか。
そういった時代に作られたものであるからこそ、アンティークならではの魅力があり、アンティークだからこその誤差があり。
手巻きという時間という手間をかける楽しみ、時間に追われる現代だからこその、時間を「費やす」という贅沢を楽しめる腕時計でしょう。
状態
ケースの裏側に傷がありますが、穴の開くようなものではなく、全体的な状態としてはとても良いものです。
希少性
とても綺麗な組み合わせの腕時計で、際立つ個性があり、年々手に入りにくくなるものです。
贈り物
劣化しづらい素材ということからも、作られてから100年以上が経っているとは、思えないほど綺麗なデザインです。
100年物という、その背景や魅力を語ることのできる腕時計としても、持って良し見せて良しで、贈り物としてもお勧めです。
時間に追われる忙しさのある方にはお勧めは致しませんので、ゆっくりと楽しめる方にお勧めしたい1点です。
備考