博物館級の迫力ある逸品
アンティーク時計では、高い人気を誇る時計メーカーの老舗ロンジン。
そんなロンジンの魅力の一端が垣間見える、100年以上前に作られた特殊な懐中時計です。
この懐中時計については、ただその迫力と経年によって加えられた「味」を堪能してもらいたいという1点。
特徴については改めて挙げるまでも無く、懐中時計の裏面に施された二頭の馬と蹄鉄の装飾にあるでしょう。
ただ単に馬を描いているだけではなく、馬を見るだけで「走っている」と伝わってくるほど力が込められているもので、くいしばった歯が描かれているのが非常に特徴的。
競走馬をご覧いただいたことのある方なら、その顔に浮かぶ血管までがわかることから、走る馬のその勢いをしっかりと描写しきれいているものだと感じ入っていただけるものだと思います。
蹄鉄と鞭も見事に装飾の中に組み込まれていて、この部分の描き方を見るだけでも、どれほど構図が練られたものであるのか、ただただ感心してしまうほどです。
またこの時計自体の色が黒色である点も、この銀で描かれている馬を際立たせているもの。
ケースの素材が銀ではないという点は、確かに貴金属の価値という点で考えるのであればマイナスの要素であるかもしれませんが、この時計に関しては、ここは黒でなければいけないものとも言えるもの。
金や銀のピカピカ輝くような、つるつるとした照りのある材質では似合わないことはもちろん、この時計がただの時計になってしまう、この時計ではあってはならない選択肢。
少しのいびつさや経年劣化も表れてしまう素材でありながら、この素材を選び、このような加工をしたということこそが、作り手の計算であったと思わずにはおられません。
文字盤はシンプルに白の陶製、そして針や文字もシンプルに。
同様に、ケース表側の風防回りにも、装飾を施すのであれば施すことができたにも関わらずそれをせず、枠の部分を狭くしてあるのは、これもこの時計の特徴を際立たせるためであるのでしょう。
様々な思惑が長い年月を経てうまくまとまったという言葉がぴったりとくるでしょうか、作り手の作風の妙と歳月に培われた熟成品です。
そしてこの時計に合わせられているチェーンは、時計のコンセプトと同じく「馬」であり、「蹄鉄」をデザインとして組み入れたもの。
3つの蹄鉄型の飾りが、見事といえるほどに、懐中時計のチェーンのデザインに合い、絶妙な間で仕上げられているところに、デザインセンスの高さが感じられます。
飾りが2つでも合わないものでしょうし、それが4つでも合わない、この3つという数も見事であれば、それぞれの飾りのサイズや、銀の紐のチェーンの太さや長さなども本当に計算されたかのようで、チェーンの先端に施されている三つ葉のような留め飾りもまた見事なものです。
元々はチェーン単体で販売する予定のものでしたが、チェーンを仕上げている最中に、このチェーンに合わせるために当店に来たような、馬をモチーフとした懐中時計の入荷がありましたので、こちらでセットとして合わせました。
アンティークは「出会い物」と言われますが、この時計とチェーンもまた「出会い物」であったといえるでしょう。
どちらも作りやモチーフ・雰囲気などが特別なもので、それぞれともに希少なもの。
その希少なものが偶然にも、同じ時に当店に訪れてきたということも、運命的なものを感じずにはいられなかったものです。
この懐中時計に合わせていただくチェーンとなると、色合いやデザイン的にも、これだといったものが本来ならばなかなか無いものです。
このようにデザインを合わせたかのように、かつ作りや年代にも共通するものがあり、雰囲気も良い組み合わせであったなら、これを合わせない手はなかったというストーリー性もまた、アンティークや1点ものならではのものでしょう。
店主のワンポイントと評価(懐中時計)
総合評価
「これは良い!」と感嘆符が付くほどに、時計の持つ雰囲気に引き寄せられたもので、アンティーク好きを唸らせる味のある時計です。
ただ単に古い時計を楽しみたいですか?それとも綺麗に仕上げられた時計を楽しみたいですか?と尋ねられて、そのどちらでもないという方なら、この時計にはまり込んでしまうはずです。
くぼみもある、経年劣化もある、古びた雰囲気もある。でもそれが全て価値を加味する方向に働いていることはもちろん、それでいながら基幹部分である文字盤の状態等、壊れていてほしくない基本的なところは良い状態。
美術館ではなく博物館が似合う、古書や洋書の隣りに、落ち着いた書斎へ。
それがこの時計の持つ雰囲気です。
状態
ケースにはくぼみや傷などがあることはもちろん、経年劣化の表れる一般金属であることから、写真でご確認いただけるように劣化が見られる部分があります。
ただこの時計に関しては、そういった古さが味であり、「綺麗さ」を楽しんでいただく時計ではありません。
そのような点をご理解いただいた上で評価をさせていただくなら、この時計の状態は総じて非常に良いもので、アンティークならではの味が良く出ているもので、ただ単なる状態の評価ではなく、そのような点を考慮した上での評価となります。
希少性
作りやデザインだけでも希少なものですが、歳月によって培われた部分は、人の手では作りあげることができません。
贈り物
どなたにでもお勧めできるものではありませんが、アンティークという概念をよくご理解いただいて、その作りの良さや雰囲気をお分かりいただける方なら、これほどアンティークを楽しんでいただけるものはありません。
備考
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店主のワンポイントと評価(蹄鉄型の飾りの付いたチェーン)
総合評価
デザインとして、動物や馬などは組み込まれることがあるものの、蹄鉄そのものをモチーフとして、かつデザイン的にもチェーンの装飾として違和感が無く、しっかりと「デザイン」という形に仕上げられているという点では、とても評価の高い1点。
チェーン全体の雰囲気も良く、アンティークらしい作りの良さも光ります。
状態
特記事項はありませんが、先端についている鍵巻きについては、薄い銀の皮が巻き付けられているような作りのものです。
外側の銀が非常に薄いため、あまり研磨することができませんので、写真でご確認いただける破損箇所と細かい傷などがあります。
ただ全体的にはとても良い状態のもので、それだけで評価を落とすものではありません。
希少性
デザイン的なことはもちろん、作りの特殊さも合わせて珍しいものです。
贈り物
銀の紐であり、蹄鉄型の飾りがあり、1つの飾りには足も頭ともいえるような特殊な加工がしてあるという、アンティークならではの1点です。
贈り物としても非常にお勧めできる1点ですが、どうしても鍵巻き部分が気になる場合は、この部分を別の銀のバーもしくは似ているもののお取り寄せが可能です。
備考
チェーンは磨きが掛かっていますが、素材が銀であるため、「燻す」というひと手間を加えることで、黒味を帯びた色合いに仕上げることができます。
懐中時計の色や雰囲気に合わせて燻して欲しいというお客様は、燻しについては無料でさせていただきますのでお問い合わせください。
どのような色合いになるかは、「銀 燻し」という単語でお調べいただくと、いろいろと紹介されているページがございます。
白色系の銀色から、銀特有の黒ずみがでたような、黒色系の銀色になります。